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東京地方裁判所 昭和58年(特わ)567号 判決

裁判所書記官

安井博

本籍

岐阜県揖斐郡谷汲村大字長瀬二〇〇番地

住居

東京都大田区大森東一丁目四番二号

医師

國枝友雪

大正一二年七月二八日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

一  被告人を懲役一年及び罰金二二〇〇万円に処する。

二  右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

三  この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、東京都大田区大森東一丁目四番二号において、国枝外科医院の名称で診療所を、同都足立区梅島二丁目三五番一六号において、足立東部病院の名称で病院を各開設し医業を営んでいるものであるが、自己の所得税を免れようと企て、現金収入の一部を除外し、架空の仕入を計上するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和五四年分の実際総所得金額が一億一八六万四六〇五円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五五年三月一三日、同都大田区中央七丁目四番一八号所在の大森税務署において、同税務署長に対し、同五四年分の総所得金額が五八三二万一四五円でこれに対する所得税額が二一七一万四四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(昭和五八年押第八五一号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額五二九六万七九〇〇円と右申告税額との差額三一二五万三五〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れ、

第二  昭和五五年分の実際総所得金額が九六六三万二六八八円(別紙(二)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五六年三月一三日、前記大森税務署において、同税務署長に対し、同五五年分の総所得金額が六〇三一万三三六〇円でこれに対する所得税額が二二九四万六二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(前同押号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額四九〇二万五五〇〇円と右申告税額との差額二六〇七万九三〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れ、

第三  昭和五六年分の実際総所得金額が八九六六万二九九〇円(別紙(三)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五七年三月一一日、前記大森税務署において、同税務署長に対し、同五六年分の総所得金額が六〇四三万一〇円でこれに対する所得税額が二二五一万七一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(前同押号の5)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額四三二九万三一〇〇円と右申告税額との差額二〇七七万六〇〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する供述調書四通

一、国枝浩(二通)、中込幸吉の検察官に対する各供述調書

判示各事実ことに過少申告の事実及び別紙(一)ないし(三)の各修正損益計算書の公表金額につき

一、押収してある所得税確定申告書三袋(昭和五八年押第八五一号の1、3、5)

判示各事実ことに別紙(一)ないし(三)の各修正損益計算書中の各当期増減金額欄記載の内容につき

一、収税官吏作成の収入金額調査書(以下調査書はいずれも収税官吏が作成したものである。)

一、昭和五四年分収入除外額の預金入金状況調査書

一、期首商品調査書

一、期末商品調査書

一、仕入調査書

一、給料賃金調査書

一、架空給料賃金計上額調査書

一、簿外給料調査書

一、貸倒引当金繰戻益認容調査書

一、貸倒引当金繰入否認調査書

一、青色申告専従者給与否認調査書

一、専従者控除額調査書

一、青色申告控除額否認調査書

一、院長経費調査書

一、給付補填備金調査書

一、定期預金調査書

一、無記名定期預金調査書

一、仮名定期預金調査書

一、投資信託期末残高等調査書

一、事業主勘定調査書

一、西川信夫作成の証明書

(法令の適用)

一  罰条

判示第一、第二の各所為につき、行為時において昭和五六年法律第五四号による改正前の所得税法二三八条一、二項、裁判時において改正後の所得税法二三八条一、二項(刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑による。)、判示第三の所為につき、改正後の所得税法二三八条一、二項。

二  刑種の選択

いずれも懲役刑及び罰金刑の併科。

三  併合罪の処理

刑法四五条前段、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条(最も重い判示第三の罪の刑に加重)、罰金刑につき同法四八条二項。

四  労役場留置

刑法一八条。

五  刑の執行猶予

懲役刑につき、刑法二五条一項。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑懲役一年及び罰金二五〇〇万円)

出席検察官 五十嵐紀男

弁護人 加藤義樹

(裁判官 羽渕清司)

別紙(一) 修正損益計算書

国枝友雪

自 昭和54年1月1日

至 昭和54年12月31日

〈省略〉

修正損益計算書

国枝友雪

自 昭和54年1月1日

至 昭和54年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

別紙(二) 修正損益計算書

国枝友雪

昭和55年1月1日

昭和55年12月31日

〈省略〉

修正損益計算書

国枝友雪

自 昭和55年1月1日

至 昭和55年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

別紙(三) 修正損益計算書

国枝友雪

自 昭和56年1月1日

至 昭和56年12月31日

〈省略〉

修正損益計算書

国枝友雪

自 昭和56年1月1日

至 昭和56年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

別紙(四)

税額計算書

国枝友雪

〈省略〉

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